木材が持つ魅力
木材が、素材・質感の観点から人間の五感にどう影響しているのかを考察してみました。
見た目、手触り、香りと言った魅力は、すぐに思い浮かべることができると思いますが、木材は、五感全てに影響するのです。そして、それらが木材の魅力となっているのです。
①視覚
【節・色・木目・模様】
同じ木材でも、色味、節の有無の違いなどがあります。
また、切断する方向や部位の違いで、異なる木目が現れます。時には珍しい模様にも出会えます。
これらは、自然が歳月をかけて生み出すアートと言え、見る人を楽しませてくれます。
この特性は素材・質感を語る上で大きな要素となると考えていますので、別のレポートで詳しく記載していますので、是非ご覧ください。
→研究レポート:自然が生み出す木材というアート(準備中)【経年変化】
木材は、時間が経つにつれて色合いや風合いが変化します。長く使い続けることで、その木でしか表現でき
ない美しさや味わいが増していくのです。
【紫外線吸収】
木材は、有害な紫外線を吸収するので、木材から反射した光には紫外線がほとんど含まれていません。そのため、木に囲まれた空間では、光がやさしく感じられるのです。
②聴覚
【吸音効果】
木材は、高音・中音・低音をバランスよく適度に吸収して、音をまろやかにするという性質があります。コンサート会場の内装や楽器、スピーカーに木材がよく使われているのは、このためです。
③味覚
【美味倍増感覚】
木材自体の味というわけではないですが、
木材は視覚・嗅覚、触覚を通じて味覚にも影響を及ぼします。
お皿やお箸は、料理と組み合わせた時の、見た目の美しさ、手に持った感覚などで感じ方が随分変わってきます。
また、酒樽は香り付けのため杉などで作られたり、反対ににおいを付けたくない場合は容器をサワラなどを使用することで味覚への調整を図っているといえます。
目で食べる、触り心地・香りと共に食べるという感覚です。食べ物が木材と一緒にあることで、おいしさアップにつながるのです。
【新食材として】
さらに、最近は木材加工の技術の進歩も相まって、様々な新しい木材の利用法が提案されています。
なんと木材そのものを食べ物にしようという試みです。木繊維が体内で分解できないことを利用したダイエットフードなどが開発されています。
④嗅覚
【香り】
木の香りに含まれる精油成分は、気持ちを落ち着かせ、リラックスさせてくれる効果(鎮静効果)があります。また、眠りを促進する効果などの研究結果も報告されています。
【消臭】
ヒノキは、含まれているヒノキチオールという成分を発散させることで、消臭効果を発揮します。
【脱臭】
ヒノキの材油は亜硫酸ガス、ヒバの材油はアンモニアに対し強い効果を示します。
「脱臭と消臭」
※脱臭とは空気中の匂いの粒子を取り除くことで、
消臭とは空気中の匂いの粒子はそのままで、代わりに異なる香りを発生させることをいいます。
⑤触覚
【低熱伝導率】
木は細胞が集まって、ストローを束ねたような構造をしています。その細胞内には、空気が含まれており、熱が伝わりにくくなっています。
そのため、触れたときに人の体温を奪わないので、木に触れるとあたたかみを感じることができます。
【衝撃吸収】
ストローを束ねたような木材の構造がクッションのような役目を果たします。例えば、床材として使用すれば、疲れにくさに影響します。安全性にも優れていると言えるでしょう。
【湿度調節】
木材は、空気中の湿度が高いときには水分を吸収し、湿度が低いときには水分を放出するという調湿作用をもっています。快適に生活できる環境をサポートしてくれているのです。
⑥補足
【抗かび・抗菌作用】
木の精油成分には、抗かび・抗菌作用があります。ぜんそくなどの病気やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因になるダニが発生しにくいことも明らかになっています。
以上、人間の五感から考える木材の魅力についてでした。木材に対しての感覚は、人それぞれ好みによるところも大きいと思いますが、これらのことを踏まえて空間に取り入れてもらうと楽しみも増えるのではないかと思います。